ツール新日程発表を受けて (8)ピノ

ツール新日程発表を受けて (8)ピノ

パリ〜ニース終了後、ティボ・ピノ(グルパマ・FDJ)は、自身のSNSにもメディアにもほとんど姿を表さなかった。実は新型コロナウイルス感染の「震源地」とも言えるフランス東部で、両親がともにCovid-19に罹患していたのだった。

入院した父へは面会が叶わなかった。自宅療養の母には毎朝パンを届けに行った。毎日、いつなんどき、悪いニュースが飛び込んでくるかもしれない……そう考えるだけで、ひどい「ストレス」と「恐怖」にさいなまれたそうだ。

長らく入院していた父親が無事に自宅へ戻り、ツール・ド・フランスの延期・新日程(8月29日〜9月20日)も発表されたことで、ようやくほっと一安心。笑顔と平静さを取り戻したピノは、子ヤギとの愛くるしいショットと共に、『レキップ』紙のインタビューに答えた。


ティボ・ピノ(Groupama – FDJ)

ほっとした。ツールが遠ざかれば遠ざかるほど、僕らにとってはありがたいこと。おかげである種のプレッシャーからは解放された。

外出制限が始まった当初は、すごく怖かった。だっていつまで(屋外練習を)中止しなきゃならないのかまるで見当もつかなかったし、ツールもまだ延期されてなかった。今は、少し、気分が楽になった。準備をする期間ができたからね。

たとえ延期されようとも、僕の目標は変わらない。100%の調子でツールに乗り込めるよう、すべてを尽くす。それは間違いない。

引用:L’EQUIPE 2020年4月20日付 Thibaut Pinot : « Je broyais du noir »

 

ツール・ド・フランスという「目標」へ向かう、強い気持ちは取り戻した。ただし身体が資本のアスリートとして、自分にも新型コロナウイルスの影響が及ぶかもしれない……との恐怖はいまだ拭いきれないようだ。

密集度の高いプロトン走行の現状を、ピノは生々しい言葉で語る。

プロトンのあり方を変えることなど出来ない。もし選手の1人が病気になったら、たくさんの選手に感染するだろう。だってプロトン内ではみんな呼吸が深いし、顔にしょっちゅうツバとかかかるし、咳をする選手も多いし……。だからウイルスの感染速度はすごく速いはず。心配だ。

引用:L’EQUIPE 2020年4月20日付 Thibaut Pinot : « Je broyais du noir »

text:五色の猫、photo:Groupama-FDJ