ツール新日程発表を受けて (9) キュンク

ツール新日程発表を受けて (9) キュンク

ツール・ド・フランスが延期され8月に開幕予定、というニュースが流れるとほぼ同時に、UCIは見直し作業中の新レースカレンダーの大筋を公表した。

・ツール・ド・フランスは8月29日~9月20日の新日程で開催
・ロード世界選(スイス)は既定の9月20日~27日開催で変更なし
 なお、競技プログラムの変更は行われない

新カレンダーでは、ツール・ド・フランスの最終日とUCIロード世界選手権の初日が同日(9月20日)に重なっている。

今年のロード世界選初日には個人タイムトライアル(男子エリート)が予定されているため、UCIがこのまま競技プログラムを変更しなければ、個人タイムトライアル(TT)に出場する選手は、ツールを最後まで走ることはできない、ということになる。

スイス選手権の個人TTでは3年連続優勝。昨年のロード銅に続き、今年の世界選では得意のTTでメダルを目指していたシュテファン・キュンク(グルパマ・FDJ)は、『レース再開へ向けた一歩』ではあるとしながらも、ツールと世界選の日程があまりに近いことに、落胆しているようだ。

エースのピノの平地アシストとして内定していたツール出場と、母国スイスで開催される世界選TTでメダルを狙うチャンス。今季の2大目標だったが、完全な形では両立しない。何がベストの選択肢か、これからじっくりと考えねばならない。

キュンクは、ツール新日程とUCI新レースカレンダーについて、以下のようにコメントしている。

他の選手みたいに、喜びでいっぱいという風にはならなかったよ。

もちろん、レース再開に向けた一歩ではあるけれど、発表の仕方にはちょっと驚いた。まだたくさんの不確定要素があるのに、まるで確定したことのように発表されたから。

数ヶ月先に状況がどうなっているか、今の時点で誰にもわからない。例えば、8月や9月にまだフライトが飛んでいなかったら?ツールの開催なんて無理だ。

不確定なことが多すぎて、(新レースカレンダーを)現実的に自分の予定として考えることが難しい。実際にレースが開催される保証もない。言うなれば、紙に書かれた、ただの日付でしかない。

だから今のところ、新日程は「大きな心配事」にはまだなっていないんだ。けれど、もしカレンダーがずっとこのままだったら、難しい決断をしなくてはいけなくなるね。

僕には3つの選択肢がある。1つ目は、ツール出場を諦めること。2つ目は、ツールに2週間だけ出場すること。3つ目は、ツールを選び、母国の世界選TTでメダルを狙うチャンスを捨てること。

もちろん決断は僕一人のものじゃない。チーム(グルパマ・FDJ)やスイス自転車連盟と話し合わなければならない。難しい決断になるだろうし、どの選択がベストか僕にもまだわからない。

参照:Le Matin 2020年4月20日付 COLLISION TDF-MONDIAUX EN SUISSE: NOS COUREURS TÉMOIGNENT

昨年のロード世界選まで、個人TTの男子エリート部門はタイムトライアル日程の最終日に行われており(タイムトライアル日程が終了してから中1日おきロード日程が開催される形式)、少なくともここ10年間、そのパターンが踏襲されてきた。

初日に男子エリートの個人TTを実施するのは、今大会の新しい試みだ。

もしUCIが競技プログラムを見直し、個人TTが9月23日(大会4日目)に行われることになれば、状況は少し改善されるだろうか。キュンクの見方は否定的だ。

もしTTが数日後ろにずれたとしても、根本的な問題は変わらない。3週間のツールを走り終え、2日のリカバリーで世界選で結果を出すというのは、なかなか難しいことだろうね。

参照:Le Matin 2020年4月20日付 COLLISION TDF-MONDIAUX EN SUISSE: NOS COUREURS TÉMOIGNENT

text:五色の猫、photo:Groupama-FDJ