外出制限下のコロンビアから│ウラン

外出制限下のコロンビアから│ウラン

コロンビア自転車競技連盟の公式HPに、リゴベルト・ウラン(EF Pro Cycling)のロングインタビューが掲載された。

実はウランは自転車選手であると同時に、82人の従業員を抱えるスポーツファッションブランド「Go Rigo Go」の経営者でもある。新型コロナウイルス禍によるロックダウンで、実店舗はすべて閉鎖を余儀なくされた。それでもオンラインストアでは販売を続け、従業員全員にこれまで通り給料を支払い続けているとのこと。

出費はかさむけど、少しずつ確実に良くなっていると思えば、前に進める。


厳しい外出制限が布かれる母国コロンビアでは、自転車の屋外トレーニングさえ許されていない。自宅の庭でローラー台を回すだけの日々。しかし憂鬱さに押しつぶされてしまう代わりに、むしろユーモラスなSNSを投稿するのが、今のウランにとって大切な日課のようだ。

人々にちょっとした気晴らしを与えるためにね。常に伝えたいと願ってるのは、僕らはみんなつながっていること。そう思えば隔離生活も少しはましになる。


新型コロナウイルスの感染拡大でレースが中断されて以来、自転車界の経済にも少なくない影響が出ている。ウラン自身も所属チームのEFから、サラリーを40%カットされた。

ただすでにある程度の財産を築き上げ、引退後のキャリア形成へとすでに歩み始めている自身のことより、希望に満ちてキャリアに乗り出したばかりの若者たちの行く先を心配する。

自転車はお金のないスポーツだ。企業からの出資のみで賄われている。もしもツールが開催されなければ、壊滅する。たとえば18チーム中、生き残れるのはたったの3チームだけ。他は極めて難しい状況に陥るだろう。

たとえばダニエル・マルティネスとかセルヒオ・イギータは、この2年に向け志を抱いていたはずなんだ。僕らみんながそうだったように。もしかしたらもうお母さんに家を買ってあげたかもしれない。

でも今回のような状況になって、契約数が減らされ、多くのチームスタッフが職を失った。選手の契約も切り替えられ、サラリーを40%減らされた。スタートしたばかりの選手にとっては厳しい状況だ。だって彼らは人生の設計図を思い描いていたはずなんだから。


すでに所属チームのEFは、新しいレースカレンダーにあわせて、練習プログラムを組み直しているという。本当にシーズンが再開するならば、そして「僕らがコロンビアを離れ欧州へ渡ることが許される」日が来たならば……ウランはすべてをおして走る覚悟だ。どんな時期だろうが、どんな気候だろうが構わないという。

イル・ロンバルディアをよく10月に走るけど、標高が高いせいか、寒い。その頃に(ジロで)ドロミテを登るとしたら厳しいだろうな。雪が降り始める頃だ。11月のブエルタは言うまでもなく、もっと寒くなる。

それでもレースを救いたいという気持ちは分かるし、大切なこと。寒くても走れ、って言われたら、寒くても走るさ。

引用:Federacion Colombiana de Ciclismo 2020年4月18日付 «Va a ser difícil volver a la vida normal»: Rigoberto Urán

text:五色の猫、photo:EF Pro Cycling