外出制限下のイタリアから│代表監督カッサーニ

外出制限下のイタリアから│代表監督カッサーニ

新型コロナウイルスの影響により、地球上の3分の1の人類が、なんらかの形で外出制限を強いられている。ヨーロッパでは30を超える国が「ロックダウン」を行い、中にはプロ自転車選手の屋外トレーニングさえ禁じられている国さえある。

そのひとつが世界屈指の自転車古豪国、イタリアだ。アマチュアからプロまで、あらゆる自転車選手たちが、3月18日以来すでに5週間も、ひたすら室内でローラー台を回している。5月4日に外出制限は解除される見通しだが、果たして本当に自転車で外を走れるのかどうか、いまだ定かではない。

だからこそイタリアのロード代表監督ダヴィデ・カッサーニは、自身のFacebookに、「外に出てもいいだろうか?」という一文から始まる投稿を行った。

権力の操縦桿を握っている人々よ。ボタンだらけの司令室で、常に手いっぱいではあるだろうが、僕らのことも理解しようと努めて欲しい。

今現在、僕らは、まるで鎖に繋がれた犬のようだ。鎖はどんどん短くなり、僕らの首を締め付ける。僕らには空間が足りない、息もできない。

こうして最悪の事態を抜け出した今、決して叫ばず、声を荒立てることなく、僕は問いたい。「外に出てもいいだろうか?」

政府の人々よ、これは単に「動く」という人間の基本的欲求に由来する利便性の問題ではないのだ。魂から来る要求である。僕らが欲するのは単に空気や太陽、健康だけではない。僕らは心を熱くしてくれる何かを欲している。そして、その何か、僕らが何度でも繰り返し行いたいと欲する何かは、家の中で見つけることはできない。

 Facebook Davide Cassani 2020年4月22日投稿


また別の日の投稿では、カッサーニは「僕の夢はいつだって世界選手権を勝つことだった。でも今は、そんなことは頭にない。四方を壁に囲まれている今は、別のことを考えている」と語る。プロ自転車界や母国イタリア選手のことだけでなく、自転車界全体に思いを馳せる。

特にU23カテゴリーの若い選手を救うべきだ、と声を上げる。

U23カテゴリー4年目の若者たちが、この憎たらしいウイルスのせいで、己の野心を台無しにされてしまうことなどあってはならない。2020年のレーススケジュールは数ヶ月。23歳以下の選手が自らの価値を証明するチャンスは、一切ない。だから何かを変えるべきだと考える。

若者たちの手から、彼らがいまだに許されている数少ない物事を、奪い取ってはならない。彼らに確かな未来を保証するよう、僕らは努めねばならない。たとえひどい状況としか思えない時でさえそこに向けて打ち込めるような未来を。つまりは彼らがここまでやって来たことを続けられるような、続けたくなるような解決策を。

 Facebook Davide Cassani 2020年4月7日投稿

カッサーニの具体的な提案は以下の通り。

◆2020シーズンのジュニア(2002年/2003年生まれ)
→2021年も2002年/2003年生まれの選手はジュニア継続

◆2020シーズンのU23(1998年/99年/2000年/2001年生まれ)
→2021年も1998年/99年/2000年/2001年生まれの選手はU23継続

つまりジュニアとU23 の両カテゴリーをまる1年スライドさせ、若い選手たちに失われた時間を、特に「就職活動」の機会を返してあげるというもの。これなら「23歳」に到達してしまった選手たちも、来年改めて、スカウトたちが目を光らせる春先のUCIネイションズカップを走ることができる。

UCI国際自転車競技連合にも、今年限りの特別ルールの制定を働きかけていくつもりだという。


 

text:五色の猫