レース再開後の安全対策│「バブル(泡)」の考え方を利用し、感染リスクを最小限に(ロット・スーダル)

レース再開後の安全対策│「バブル(泡)」の考え方を利用し、感染リスクを最小限に(ロット・スーダル)

欧州諸国が、市中での感染拡大リスクを減らすために導入していた厳しい外出制限の緩和へと動き出している。ただし、ワクチンが開発されたり、ウイルスが根絶された訳ではなく、人の動きが活発になれば、再び感染が拡大する危険もある。

ロードレース界でも、7月(ワールドツアーは8月)のシーズン再開を目標に新しいレースカレンダーが策定された。実際にレースが実現するかどうかはまだ誰にも分からない ― が、選手もチームも、そこに記された日程を道標に、準備を進めている。

ウイルス危機の影響で100日間に短縮されたレースシーズンは、同時期に複数のレースが開催されることを意味する。特にジロ、クラシック、ブエルタの重複は、選手・スタッフのローテーションでチームが頭を悩ませるところだ。新型コロナウイルスの感染リスクを最小限に抑えながら、レースを転戦していくにはどうするか。トレック・セガフレードの取り組みに続き、今度はロット・スーダルの対策を紹介する。


ロット・スーダルのチームドクター、イェンス・デ・デッカーによれば、チームの感染防止対策には「バブル(泡)」の考え方が応用されるそうだ。

まずは、「バブル(泡)」について少々の説明が必要だろう。

「バブル(泡)」はウイルス感染防止の説明に使われてきたコンセプトで、下のGIFは「ロックダウン」状況下の基本ルールを説明している。

  • 1つの「バブル(泡)」の中は、同居している家族のみ
  • 同じ「バブル(泡)」の中でのみ、社会的距離より近い接触もOK
  • 「バブル(泡)」の中には同居している家族以外を入れてはならない
  • 入れてしまうと「バブル(泡)」は壊れる = お互いに感染リスク
参照: The Spinoff 2020年3月26日付 Siouxsie Wiles & Toby Morris: You’re waking up in lockdown New Zealand. Here’s how it works

ベルギーでは、外出制限緩和に「ソーシャルバブル*」を導入するとソフィー・ウィルメス首相が発表したばかりで、「バブル(泡)」はかなり浸透しているため、ロット・スーダルがこの考え方を取り入れるのもある意味自然な流れだ。

* 具体的には、「同居している家族×2組」で1個の「バブル(泡)」とみなす。

チームドクターのデ・デッカーは、「バブル(泡)」がロット・スーダルでどのように応用されるかを、以下のように話している。

28名の選手と全てのスタッフを3つの「バブル(泡)」に分ける。新レースカレンダーから考えると、ジロ、ツール、ブエルタのグループに分けるのがいちばん合理的だろう。

3つのバブル(泡)は分かりやすいように色分けされ、それぞれのレーススケジュールで転戦していくことになる。別のバブル(泡)との行き来は極力避ける。それが汚染のリスクだからね。

つまり、常に同じメンバーとレースし、宿泊し、移動する。必要な機材を決まった国のひとところにストックすることも考えている。

バブル(泡)に新しく入る者は必ずその前に検査を受ける。フォローアップの検査や日々のメディカルチェックも行ったほうがいいかもしれない。

1つのバブルから別のバブルへの移動は(最小限に抑えたほうがいいが)避けがたい。例えばトーマス・デヘントは、ジルベール、デゲンコルプ、ウェレンスと同じツールのバブルからスタートするが、フレーシュ・ワロンヌとリエージュ・バストーニュ・リエージュの後に、ブエルタのバブルに移ることになるだろう。

少々の柔軟性は必要になるが、とにかく重要なことは、選手やスタッフが別のバブルに移るときには、その前に必ず再検査を受けることだ。

具体的にどう検査を行っていくかはこれから詰めていかなくてはならない。我々は現在鼻粘膜スワブ(鼻咽頭拭い液の採取)で検査を行っているが、8月以降にどの検査が入手可能か今の時点では分からない。

一つ言えるのは、これが正しい方針だと100%確信している、ということ。

他チームの医師たちやUCIとも連絡を取り合っているし、ぜひ我々の考え方を他のチームでも取り入れてほしいと思っている。実際にどうやっていくかなど、連携できれば素晴らしいね。

参照: HLN 2020年5月23日 Is dit concreet plan van Lotto-Soudal dé oplossing voor het corona-proof heropstarten van het wielerseizoen?

text:五色の猫、photo:Lotto Soudal