国境の向こうは外を走れない│セネシャルとカヴァニャ

国境の向こうは外を走れない│セネシャルとカヴァニャ

ツール・ド・フランスの新日程が決定し、UCI国際自転車競技連合は大まかながら再開後のスケジュール案を公表した。この先、自転車界は、少しずつシーズン再開へ向けて動き出していく。

もちろん新型コロナウイルスの脅威はいまだ収束には程遠く、世界中の多くの人々が外出制限下に置かれている。しかもひとくちに「外出制限」と言っても、国によりできること・できないことは大いに異なる。特にフランス、イタリア、スペインというグランツール開催国は、屋外での自転車トレーニングを禁じている。

4月12日の仏TV番組「stade 2」で、興味深いレポートが放送された。それは同じフランス人であり、同じドゥクーニンク・クイックステップの一員でありながら、フロリアン・セネシャルとレミ・カヴァニャの練習環境はまるで違うというもの。


*画像は4月12日放送フランステレビジョン『stade 2』より

北フランスのベルギー国境沿いで生まれ、現在はベルギー側で暮らすフロリアン・セネシャルは、3月18日に外出制限令が発動された後も、毎朝欠かさず2時間の屋外トレーニングを行っている。これまでとの違いは、絶対に国境線を越えないこと。

ここベルギーでは、政府によって、屋外での運動が認められるんだ。僕は幸運さ。フランドルの激坂はすぐそこにたくさんあるし、道には誰もいないし。

毎朝、外へ走りに行けるのは、気分がいい。自由を味わえる。妻は気軽には外出できないから、3日もたつとイライラが募ってくるようだ。だから外に練習に出られず、ローラーを回すしかない選手たちも、きっと精神的には楽じゃないだろうな。

2020年4月12日 france TV stade 2より

 

*画像は4月12日放送フランステレビジョン『stade 2』より

一方でフランス中心部で暮らすレミ・カヴァニャは、もう4週間も外を走っていない。3月17日以来、アパルトマンの中で、ひたすらローラー台を回している。

もうすぐローラー台を投げ捨ててしまうかも(笑)。

もちろん外を走りたい。仕事をしたい。どうしてサンドイッチ配送係が自転車で走ることは許されてるのに、僕らはダメなんだろう。でも嫉妬してるわけじゃないんだ。フランス全土がこうなんだから、ルールは全員が守らなきゃ。

2020年4月12日 france TV stade 2より

フランスは5月11日から、順次、外出制限が解かれる予定だ。スペインはすでに一部の事業では業務再開が認められ、イタリアも封鎖解除に向け少しずつ動き出している。

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text:五色の猫